人生百年時代…といわれて久しくない。この時代には、テクノロジーの発展、進化によって、もたらされたライフスタイルの変化があり、人ともつながることが容易になったことも大きい。しかし、その一方で『孤独』な時間を感じることが多くなってはいないだろうか。
一人ぼっちなのか、独りぼっちなのか、ひとりを嘆くか、ひとりを楽しむか、世界中には一体どんなひとり『孤独』があるだろうか、考え、向き合ってみることにしよう。
『孤独』と『自由』を愛するスナフキンの言葉!
“うん、計画はあるにはあるよ。でもぼく一人っきりでやることはなんだ。わかるだろ?”
『孤独』と日本人の関係性とは…
☑ みんなは、いつ一人になりたい?
忙しくて一息つきたい時に限って、上司に『ちょっといい?』なんて言われて時間を取られたり、家に帰ってゆっくりしたいと思っても、家族がいて話を聞かないといけなかったり、いつも1人がイイといわけではないけれど、お風呂のように、『1人に浸かりたい』。そんな人は少なくはないはず。我が国、日本には、『1人〇〇』や『〇〇ぼっち』のような言葉が多くある(*´Д`)
仕事に集中したいとき
他人に見られたくないとき
趣味に没頭したいとき
目をつぶって迷走したいときw
こんな時は、他人の視線を気にせずにやりたいことではないだろうか。
☑ 海外メディアも注目していたヒット商品
アウトドア用品やゲーム用の家具などを扱う会社のビーズ社は、この〇〇ぼっちの商品を販売している。それがこの『ぼっちテント』だ。2014年から販売されている。
☑ 海外と日本の反応
海外では、その珍しさからぼっちテントは取り上げられることもあったが、『日本以外で需要があるのかがわからない商品だ』と指摘されたり、『集団行動が好きな日本人が一人を求めるのは分かるかも』のような皮肉が多い。
一方で、日本国内から、『これよくね?』、『ほし過ぎる~』、『集中できそう』、『こもれるか~』といったコメント多くあった。
☑ 『ぼっちてんと』を自分の部屋の無いお父さんが試してみたw
リビングに設置してみよう。
これは!、結構大きいのでリビングの半分を占領してしまった(笑)家族の視線は少々感じるが、テントの中に入ってみよう。内側からファスナーを閉めて、座ってみると、それは何とも言えない空間で、得も言われぬ感覚に陥った。ここは宇宙?夜の星空?何という別世界!と感じることができた。が、妻が早々に撤去を決めていた(;’∀’)
☑ 用途は様々
ライトを持ち込めば、読書も、仕事もはかどることになるだろう。そのまま目をつぶって寝てもイイ。何かに集中する仕事には向いていると思う。仕事、受験勉強、パソコンゲーム、趣味のために利用する人が購入しているようだ。自宅に自分の部屋がないお父さんの書斎としても活躍しているよう(笑)大学の研究室の暗室としても機能していることもあるという。
☑ 日本には『おひとりさま』のニーズがある
飲食店では、1人1人間切りしている空間のカフェや飲食店も多い。一人焼肉、一人鍋、一人すき焼きなんて可能なお店も存在する。一人すき焼きは、孤独のグルメ最終回で放送されていたのを見たが、あれはイイ!まさに『すき焼き食べながらサミット』が開催される空間であった。とくに鍋をみんなで食べる習慣から一人で美味しい鍋を食べたいニーズが日本人の心の奥底にあるかもしれない。すき焼きで、『あっ肉ばっかり!』『お前ばっかり』なんてことになるのが嫌な人は多いはず。こんなお店には、『まわりを気にせずにお楽しみいただけます♡』そんな謳い文句が踊っている事だろう♪
☑ 日本人には小さい空間を好む歴史がある
想像してみよう!
日本人は平安の時代から、茶室が存在し、茶室を有効活用していた。もちとんお茶をふるまう事を目的としたものであるが、何かをつなぐときと遮断するときには重宝されていたように思う。人と人をつなぐとき、視線を遮断したいとき、そんな時には茶室の空間が良い効果をもたらしていたため、茶室は、光や音、繊細に稼働するふすまや、仕切り方を発展させていった。
☑ 現代ではどうだろうか!
一人ひとりがスマートフォンを持ち、どこかで社会、友人、会社、家族などと常につながっている。繋がっていると安心、繋がっていることで精神安定になっているのかもしれないが、一方で常時接続社会とでもいうだろうか、気付かないうちに監視されている社会のストレスを感じてはいないだろうか。どこかでそのストレスから解放されたいという、切断思考は持っていないだろうか。これからは、『ひとり』の空間を持ちながらも、地域のイベントのような人があつまる場所、音楽ライブや音楽フェス、地域のお祭など、こんな『みんな』の空間が必要も必要であることは確かである。
『孤独』と『自由』を愛するスナフキンの言葉!
“あんまりおまえさんがだれかを崇拝したら、ホントの自由は得られないんだぜ”
職場の孤独について考えてみる
☑ 在宅勤務はやっぱり寂しい
おしゃれな仕事をしている人を見かけるとしたら、やはりカフェやレストランなのでPC片手にカチャカチャしている人かな。孤独のような印象を受けるかもしれない。でも先進国のアメリカではどうだろうか。おしゃれなカフェやレストランが軒並みを連ねるシアトルの市街地では、温かみのあるコワーキングスペース(Coworking Space)が人気だ。まさにフリーランスの人々の職場と言えよう。PC一つあれば仕事ができる時代、先進国で在宅勤務はやっぱり寂しいと思うようだ。
☑ 一人は好きだけど、独りは嫌い
わざわざ会社に行かなくても仕事ができるのに、なぜオフィスに通うのか。それは『孤独』があるからだ。コワーキングスペースで別々の仕事をしていても、周りでは仕事をしている人がいるし、何かあれば会話もできる。周りの雰囲気がモチベーションを上げられる理由と話す人もいる。確かにそうだ、一生懸命な人がいるだけで鼓舞させられるし、サボらずに仕事をしなくてはいけない、そんな気持ちにさせられるのは間違いないだろう。
☑ リモートワーク弊害
IT技術の発達により、全体の労働者の4割がリモートワーカーであるアメリアでは、弊害が起きてきている。1970年代に研究が始められ、通勤コストを伴わない働き方が拡大されてきた現状があったが、2010年以降縮小傾向がみられているようだ。在宅勤務や、ギグエコノミー【(Gig Economy)は、インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態のことをいいます。】は、人と人との交流が減りやすくなり、そこから生まれる『孤独』によって、健康がむしばまれ、さらに創造力、意思決定能力も低下していく傾向がある。その『孤独』という伝染病が広まることが危惧されていることは間違いないだろう。
☑ 孤独が世界の仕事を変える
さて、コワーキングスペースは理想の職場となり得るだろうか。2017年「調査のエマージェントリサーチ」の調査では、コワーキングスペースを利用したことによって、89%が『より幸せになった』、83%が『孤独感がなくなった』と話している。リモートワーカーやフリーランスの人々がコワーキングスペースに来る理由は、ネットの接続環境もあるだろうが、一番は、人と接触する事だろう。人と顔を合わせ、挨拶をし、会話をする。時には友人となったり、時には一緒に仕事をしたり、時には仲間になったり、同じような仲間がいる、仲間が増えていく、そんな孤独からの脱却が、在宅勤務ではなく、コワーキングスペースを利用する理由であることは間違いない。コワーキングスペースのような共同利用型オフィスの利用割合は、若干ではあるが増加傾向にあることが国土交通省のテレワーク人口実態調査で確認されている。
『孤独』と『自由』を愛するスナフキンの言葉!
テクノロジーが日本の孤独を癒やす
☑ 初期アイボ(AIBO)に救われている話
ソニーが開発した犬型ロボットの『aibo』アイボは、世界的にも有名だ。このアイボについて癒しを与え続けている場所がある、それは老人ホームである。ロボットの犬・アイボには、感染症の心配もなければ、噛みつく危険性もない。必要な時に反応し、必要な時に答えてくれる。老人ホーム女性は、アイボのことをこの《施設のアイドル》と言う。『うみちゃん♪』と名前を読んで、しばらくして反応するうみちゃんに対して、破顔一笑したという。ペットは心の栞線に触れることが多いことはよく知られている。人らしい生活を送ってもらうきっかけとして、救世主がテクノロジーかもしれない。「人間の根源に近い、愛と癒しのコンピューター」と評したアイボ(AIBO)は2006年に事業の見直しで生産終了している。
☑ 最新のアイボは、「aibo」
2018年に最新のAIを搭載して復活しているようだ。最大の特徴は、鼻先のカメラで100人くらいは顔を見て判別できること。遊んでくれた人に対して、個別の感情をを表すペットとなる。そして人の指示に従うとは限らない(笑) 本体価格も20万円程度だったり、3年の維持費が10万円程度かかったりと、まさに本物のペットのようだ。癒しについては、「役に立つ」と言えるかもしれないが、それ以外ではどうだろうか。ロボットと言えば、鉄腕アトム、未来型ネコのどらえもん、Doctorスランプあられちゃんのようなものが人気であったが、それに近いものを人間は求めているのではないだろうか。近い将来、本当に力持ちのロボットが登場し、癒しだけでなくて、本当に役立つロボットだと言える日は遠くない気がする。超高齢化の日本だからこそ、世界に先駆けて孤独を癒やす役立つロボットの開発に成功するのではないだろうか。
孤独の達人は、オランウータン
☑ 孤独が生存率を上げている
孤独を愛する動物がいる。それはウランウータンだ。ヒトと猿類は別の進化を遂げてきたわけだが、オランウータンはアジアの熱帯雨林で進化してきた。「オランウータンは霊長類の中では珍しく、集団生活をしない生き物で、その原因は食べ物と言われています。」と話すのは、生態を長く研究している国立科学博物館日本術振興特別研究員の久世濃子さんだ。
☑ 孤独によって効率を上げている
オランウータンは、群れない事で生態を維持している。消化器系が発達していないことから消費しやすい果物を多くとることになるのだが、果物は年中あるわけではない。熱帯雨林では果物が少ない時期が数年単位で続くこともある。好物であるイチジクも少量しないことから群れることなく個体でいた方が効率が良いため群れなくなったと考えられている。
☑ 野生で孤独は、リスクが高いのでは?
群れることで外敵に襲われることを防いでいるのは様に想像できるが、オランウータンは大丈夫なのだろうか。しかし、専門家は首を横に振る。オランウータンの生存率は非常に高く、メスが初産まで生き延びられる確率は94%にも達している。これを上回るは先進国のヒトだけです。理由には、群れない事で感染症にかかりにくい。樹上生活のため地上の病原体に感染しにくい、樹上生活は捕食者に襲われにくい、この3点があげられる。
☑ オランウータンのメスはワンオペ
「ワンオペ」とは、飲食店などの店舗をひとりでまわしている状態、つまり、「ワンオペレーション」のこと。この言葉がインターネットを中心に広まり、ニュースなどでもとりあげられるようになった。最近ではそこから派生して「ワンオペ育児」なんて言葉もできているそう。まさにオランウータンはワンオペだ。子供が独り立ちするまで7年くらい手厚く保護して育てる。ヒト以外では最も長い子育て期間になる
☑ ワンオペの子育ては大変ではないのだろうか
オランウータンのメスは、ワンオペの子育てにストレスは感じないのだろうか。専門家は言う「オランウータンの子は、母親が求める以上のことをしない生き物です。わがままを言ったり、駄々をこねる子もいないのです。」ヒトの母親のように公園にいって他の親子とコミュニケーションをとる機会は多少あるようです。母親は遊び相手にならないので、他の子ずれのメスの所に連れて行ったりして遊んでもらうようですね。
☑ オランウータンのオスはどうなのか
ではオスはどうなのか。オスは群れを守る必要のないため、まさに孤独そのものだ。樹上で生活をして生涯に渡ってメスに遺伝子を提供するだけの存在でしかない。本当に孤独な生き物だと専門家は話す。7歳から15歳のオスがメスと数日過ごすことはあるようだが、これは数日子供と遊ぶだけですぐ孤独になる。一緒に生活をして子供を守ってと、ヒトのようにせめて両親と子の三匹で過ごしてほしいと思ってしまうが、なぜしないのだろうか…。
☑ オランウータンは孤独の達人
オランウータンは、彼らなりのアンテナを張っていて、彼らなりに周囲を気にしながら生きています。適度な距離感をもって群れずに生活を維持しているオランウータンは、まさに孤独の達人と言えるかもしれない。ヒトはテクノロジーの発達によって孤独でも生きていける環境があるが、やはりヒトも適度な距離感がないとストレスが溜まってしまう。孤独では長く生きていけないのは考えずとも分かることだが、自分自身で心地よい環境を作ることができるオランウータンは、まさに孤独の達人と言えるかもしれませんね。
『孤独』と『自由』を愛するスナフキンの言葉!
アリも「ひとり」がツライ生き物
☑ 孤立すると死を急ぐ
ヒトに限らず、独りがツライ集団生活をしている生き物にとって、孤独な時は避けて通れない問題でもあるだろう。孤立することで自ら死を早めてしまうことが大いにある。と産業技術総合研究所の分子生物学・生態行動学の古藤日子さんは言う。
☑ 集団行動しているアリを孤立させると
オオアリの行動を調べた結果、孤立すると死を急ぐようだ。一つは一匹だけの“孤立アリ”、二つ目は幼虫と一緒の“同居アリ”、三つ目は10匹の“グループアリ”の三パターンに分けてアリの行動を調べた結果、その生存日数はいかに孤立が死を早めているかが良く分かる。“グループアリ”は、66日間生きたのに対して、“同居アリ”は、半分以下の22日、“孤立アリ”にいたっては、6.5日しか生きなかった。分析すると、“孤立アリ”はエサは食べていたもののエサの消費量が少なかったことと、“グループアリ”の倍以上行動していたから早く死に至ったのだろう。このことが大きな要因であったと専門家は言う。
☑ 独りぼっちの環境がもたらすもの
孤立アリは、仲間を探して動きまくり、独りぼっちによるストレスからエサを消化できずに、エネルギー切れとなってしまったと推測される。アリと人は全く違うとは言え、なんだかアリがヒトのように思える。独りぼっちにストレスを受けてしまい、胃腸の調子が悪くなり、栄養が十分に取れなかったことが体調を崩すことになる。まさにヒトの事のようだ。
☑ 使命感が寿命を延ばす
同居アリは、孤立アリより長生きした。それは使命感であろう。幼虫の世話をしなくてはいけないアリは、必要にされていることから孤立アリより長生きしたと考えられる。ヒトも必要とされていることで生きがいを感じ頑張れる。何かやらないといけない。誰かに必要とされている環境が寿命を延ばす要因の一つであるかもしれない。アリの世界でも生き甲斐があるのかもしれませんね。
科学で『孤独』を解明
☑ 孤独の研究
寂しい、哀しい、ツライ、やるせない、様々な感情の問題が孤独にあるかもしれないが、孤独がもたらす健康にも影響があるというが分かってきている。『孤独』が健康に及ぼす影響の大きさを調べた研究がある。「米ブリガムヤング大学教授(心理学)のジュリアン・ホルトランスタッドらの研究」2010年この研究では約30万のデータにより、孤独感が引き起こす社会的接点の少なさこそが、喫煙や飲酒、運動不足、肥満より大きな短命リスクと位置付けた。2015年には約340万人のデータをもとに、孤独感から死亡率が26%も高めていると結論付けた。一人暮らしは32%、社会的孤立は29%も高める結果になっているという。
☑ 孤独が引き起こすメカニズムとは
『つながりと健康格差』の著者である東京大学高齢社会総合研究機構・特任講師の村山洋史氏はこう語る。孤独からストレスで、その体内では炎症反応が起きて、脳卒中や血管系の病気を引き起こしやすくなり、免疫機能が落ちることで肺炎や呼吸器の病気になったりするリスクが高まると明言する。孤独感がもたらすストレスによって糖尿病やがん、認知症やうつの発症や自殺のリスクにもつながるとされる研究もある。
☑ 社会的孤立は伝染する
村山氏は、まだまだ人の身体の中では何がおこっているかが分かっていないことが多いとした上で、社会的な孤立にも着目しており、孤独を感じたり、社会的に孤立してしまうと、他人と接触が少なり、得られる情報や支援が得にくくなってしまう事が大きな問題であると話す。孤独感は友人から友人へと伝染する。これは孤独研究の第一人者シカゴ大学教授(社会神経科学)の故ジョン・カシオッポ氏が2009年にまとめている。友人が少なく、孤独感を抱いている人ほど、人に対する不信感が強く、数少ない友人とも関係を断ってしまう。その絶たれた方の友人も孤独感にさいなまれ、同じことを繰り返してしまい、希薄な人間関係で生きる負の連鎖を引き起こしやすいとジョン・カシオッポは考えていた。
☑ 現代の孤独はどうか
現代では、SNSが世界中で利用されており、まさに世界中と「繋がる」という事が容易になっている。米ピッツバーグ大学の研究者らが20017年に「SNSを1日2時間以上使う人が社会的孤立に孤立していると感じる可能性が1日30分以内の人と2倍以上」と発表した。もちろんSNSで繋がれたことに良いとされる研究も悪いとされる研究もある。そして、仮想空間であるSNSで満足感が十分に得られても、現実世界での孤独感によって相殺されているという研究報告もある。これからの百年、現実と仮想のはざまで、人々はいったい何に幸福感を得ていくことが、最善なのだろうか。
今回は以上です。いつもと手法を変えて、新聞記者風でした(笑)朝日新聞を読んで、「孤独」について、とても勉強させられるものがありましたので記事にしました。